日本人が持っている『自衛隊の戦闘のイメージ』と『市街地戦(本土決戦)のイメージ』、『実際に起こる可能性のあるリアリティーの高い市街地戦のイメージ』が、それぞれがバラバラで一致せず、乖離しているのが現在の状態であることを「はじめに」で問題認識として、皆さまへ問いかけをしました。
本文では、実際に起こりうる市街地戦の実態を明らかにし、『市街地戦で陸上自衛隊は本当に戦うことができるのか』を焦点に記述してきました。最終章では、戦える自衛隊にするために必要な提言を行いました。
実は、もう一つ、問題認識があります。それは、自衛隊サイドにあるものです。勿論私にもありました。
それは、自衛隊が一般の人には理解されない存在であったと書いているのに、一般の人がどの程度、自衛隊に関する知識と興味を持っているのか、自衛隊の認識と一般人の認識との距離感を把握してないというところです。
そこが、そのまま自衛隊と一般の人との距離になっているのではないかということです。
防衛省・自衛隊に関する話題や用語というものは、なんとなく分かるものと、軍事用語で自衛隊や防衛庁関係者には簡単に理解できても、一般的には使わない言葉や聞いたことのない言葉のほうが問題になるということです。
たとえば、「世界標準」というのは、具体的にどういうものかは分からなくても、一般の人には、経済や他の分野と同じように、なんとなく「アメリカがやっているもの=アメリカンスタンダード=グローバルスタンダード」だと、理解できるものだと思います。
このように何となく理解でき許容できますが、しかし、理解できない言葉が出てきた時点で、そこで読むのが嫌になってしまったり、理解する意欲自体がなくなり無関心という方向へ進んでしまうのではないでしょうか。
一般の人に正しく理解して頂くこと、正しい知識を与えることよりも、まずは、簡単に受け入れやすい形にして、理解してわかっていただくことが重要だと思います。
一般の人に理解しにくい内容をいくら多く書いて出版したり、情報発信しても、関係する人たち以外に伝わらなければ、知識や興味、問題認識が一般の人と、乖離したままだからです。
本書は、自衛隊と一般の人の距離を縮小し、さらに一致するために、一般の人が読んで理解しやすいという視点で全体を作り上げました。皆さま如何でしたでしょうか。
災害派遣による自衛隊に対する親しみや期待というものから、厳しい周辺の防衛環境の中、次の段階へ進めていく必要があると思います。
それは、日本を防衛する武力集団として認識され、支援される組織へ進んでいくことです。
自衛隊は、平成に入り改革を開始し、現在も改革を続けています。
冷戦までの北重視から、ソ連崩壊後の隙間のない防衛体勢から、現在完全に中国を対象とした西重視へシフトしています。大きな変化するため、自衛隊内部、各部隊は多くの業務量を抱え、踏ん張っている状態だと思います。
災害派遣のイメージの自衛隊から、国民全体に真の姿を理解され、支援される武装集団である自衛隊へ進んでいくことを祈念致します。
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