戦場で一瞬にしてやられる状況を猛禽類が獲物を捕らえる姿と重ねる

戦場で一瞬にしてやられる状況を猛禽類が獲物を捕らえる姿と重ねる

 

 

常に気配を感じるレーダーを回す身体ができる

 

1980年頃年間180日以上、小隊長として自然豊かな演習場で訓練に参加しました。小隊は最前線に配置されるため、訓練が始まると1週間ほど自然の中で生活します。敵が近づくのを常に警戒しながら、夜は落ち葉を身体にかけて寝ました。

1年のほとんどを自然の中で生活していると、いつの間にか身体の中にレーダーができます。
身体の中にレーダーができると、寝ていても常に警戒状態が維持できるようになります。
防御戦闘間、仮眠中自然にレーダーが回り始め、敵の動きか味方の動きか自然の風による音かを察知できるようになります。

何かの気配か音で眼は醒めないのですが、目をつぶっている状態で意識だけが開きます。
次に開いた意識は、音のした所や気配を感じた所の状態を確認し始めます。

 

 

気配の察知と識別の実施

 

防御戦闘間、開いた意識は、各接近経路のどこで気配を感じたかを捜し始めます。通常、防御準備・戦闘間それぞれの経路に警戒員を配置するので経路沿いに意識が飛び回る感じです。

例えば、東に気配や音を感じた時、感じた気配は、「敵か味方か」について意識が飛んでいき確認します。

意識が、この位置に警戒員を配置していて落ち着いている状態なので、警戒員の交代だなと理解するとそのまま、意識は閉じ始め、また眠りに落ちます。

違う気配でまた意識が開いた時、この方向は警戒員は置いていないはずなので、何かが近づいているなと意識が警告を発します。

意識が警告を出した瞬間に、目が覚め身体が覚醒状態になります。

サスペンダーにとめているプレストークボタンを押したり、有線電話のダイヤルを回し小隊員に敵襲対処の指示を出したりしました。

レーダーが探知する距離は、調子のいい時は50メートルぐらいあったと思います。結婚し、妻が近くにいるようになると自然にレーダーの性能が低下していきました。

単身赴任をするようになると、10数メートル程度感度は悪いが、レーダーは復元されました。

 

 

ハンターの勝負は一瞬で終わる

 

家内が横須賀に来たので、三崎口で有名なパン屋さんで焼きたての厚切りのベーコンを惜しげもなく使用して焼き上げたエピを購入し、浜辺を散歩しました。

横須賀は、トンビがとても多いところです。浜辺の岩に座りながらパンを食べ、浜辺沿いの家は、外に身体を洗うマイシャワーが必ずあり本当に海が好きなんだなと感心したりしていました。

この時、自然にレーダーが回っていて、上空高く一羽のトンビがいるのをぼやっと捉え、トンビの位置を確認していました。

少し近づいたかな、離れていったなという感じでロックしていました。自然の中にいると、いつの間にかレーダーが可動します。

厚切りのベーコンの入った焼き立てのエピは、二人のお気に入りです。

上機嫌で味わいながら、江の島の方を見て、「あそこが葉山だね」と説明しても、家内がなかなか確認できないようなので、右手で方向を示し確認できるように意識を集中した時でした、

「バサッ」という音と一瞬の気配と軽い風を感じるとともに、左手に引っかかれたかすかな痛みを感じました。

左手に持っていた、厚切りベーコンのエピを家内と私の直径35センチの円程度の隙間を通ってトンビがさらっていったのでした。

完全に気配が消えていて、気配を感じたのはパンを取った一瞬でした。

 

 

戦闘でやられるのは一瞬でわかった時は手遅れ

 

ワシ、タカ、トンビなどの猛禽類は、相手のレーダーが回らなくなった一瞬を捉え、音と気配を消して接近し、気配と音が聞こえた時には狩りが終わることを実体験しました。

エピを取られる前まで、ずーと意識がトンビをロックしていましたが、家内に葉山の街を教えようと話に集中し、レーダーが停止したところを完全にやられました。

この時、気が付いた時は死ぬ時でもあるなと戦闘のイメージと重なりました。

敵が何処にいるかもわからず、スナイパーに撃ち込まれ気が付いた時は、絶命をしていたり、気配を消して待ち伏せをしている敵に始末される状態は、こんな感じではないかと思いました。

 

 

もう一度この感覚を味わいたい

 

気が付いた時は死ぬ時という戦闘のイメージをもう一度味わいたいと思いました。

家内が来た時、ベーコン入りのエピを買って同じ場所で、同じ行動を何回かしましたが、トンビは接近もしてきませんでした。

話に夢中になって自然にレーダーを停止したあの時の状態にはできず、トンビは接近もしてきません。

野生動物は、レーダーを回していると確実に感じ取って行動することがわかりました。

家内は言います。
「あの時勝負がついてあなたはやられたでしょ。次はないのよ」

 
≪次のブログも参考にしてお楽しみください≫
 
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