戦闘で負ける人間の思考法 -主観的な論理思考-

戦闘で負ける人間の思考法 -主観的な論理思考-

 

 

今置かれている状況をどう見るか

 

戦闘、実戦に手強い人間は、あらゆる危険な状況を予想し、全てに対応する作戦を作り、対応できるまで訓練を積み上げます。いざ実戦の時は、緊張して身体が硬くなり訓練してきた動きができなかったり、慎重になり過ぎ消極的にならないように「計画は悲観的に、実戦は楽観的に」といわれます。

行動間、我の行動に影響を及ぼす気温・雨・風・雪などの気象状況、行動を阻害する急な斜面や密集した林、河川や橋、道路などの地形の状況や最新兵器や戦力の差、どのような訓練をどれだけやってきたか、敵の指揮官の性格などの敵の状況を分析します。

もう一つ重要なことは、自分達の疲労度や戦力の回復などの自分の状況について分析を行うことです。そして、将来の動きを予測し作戦を練り上げ、戦闘に勝利するための行動を準備します。

戦闘が始まると、敵の状態と自分(達)の状態を正確に掴むことが必要不可欠となります。

刻々と経過する時間の中でどのような戦闘(業務)がおこなわれ、危ない状況は何時どのように発生するか、計画では掴んでいますが、実戦の時は敵の状態や自分の状況を客観的に把握することが極端に難しくなります。

敵は損害の状況や弱点を見せないように秘匿するのが常態だからです。ゲームのように全てが見えて把握できることはありません。

戦闘場面でなくとも、会社があなたをどう評価しているのか、期待していることは何か、上司の部長や課長のあなたの評価やあなたへの期待度、ライバルがどう思考しているか手をとるようにわからるようなことができないのと同じです。

実戦は楽観にとは、伸び伸びした動きをするための「気持ちの持ちよう」について示しているものであり、常に、予想される多くの危険な状態へ対応できる計画を作成する時の思考パターンをが継続する必要があります。

 

 

自分に都合のよい見方

 

人間は、強い時は強いのですが、弱い生き物であり心も揺れやすいものです。実戦では、普段客観的な見方ができたり、論理的に思考ができる人でも苦しい状況に置かれるため、判断が狂います。

普通の人は、目の前に現れた状況と目の前の状況の連続した先にある将来について、自分達が苦しい状態になればなるほど、一つの情報を見てもどうしても自分達に都合のいい状況として捉えてしまい(捉えたくなり)判断してしまいます。

例えば、「敵の攻撃が止みました」と報告を受けたり、情報を入手した時、この情報資料の評価と判定を「我の戦いが効をそうして攻撃を辞めざる得なくなったのではないか」、「自分達の態勢を立て直し攻撃に転移するチャンスが来たのではないか」と自分に都合のいい、耳触りのよい内容として捉えてしまい、報告を受けた上司も更に都合のよい敵の動きに対する見方をしてしまいがちです。

計画を作成する時の思考パターンと今迄の戦闘の状態を見る視点を持つことによってある程度正確な状況を掴むことができます。

わかっていても人間は弱いもので、自分が行った評価から更に20%引いた状況が、実態であると捉える必要があります。それだけ楽観的な見方をして心を安心させたり、自分に有利な状況にしたくなるものです。

 

 

悲観的な見方

 

戦闘が思う通り進まなくなったり、動かなくなる「こう着」状態になってくると、忙しく動きまわっている状態から、停止した状態になるため、情報量が増加します。通常、敵の情報よりも自分達の情報が次々と入ってくるのもこの時です。

各部隊から損害状況などの状況が次々に報告されるので、頭に自分達の損害状況が強烈に焼きつきます。

我の被害状況を聞き続けているうちに、心が徐々に圧迫され、敵の方が優位なように錯覚し始めます。

このような状態になると、今迄の楽観的な見方から、なんだか負けているのではないか、敵はやられておらず被害は我の方が圧倒的に多いという悲観的な空気が一気に広がり辺りを支配します。そして、戦況をどうしても悲観的に見てしまったり、分析をしてしまい判断の狂いが生じ始めます。

敵や相手の状況よりも自分達の状態はわかるため、自分達の損害が刻々と増えていく状態や第一線の苦しい戦闘状況が報告され、戦力が優勢で今迄攻撃していた行動から、このまま攻撃していたら、損耗が激しく戦力が急激に低下し、やられてしまうのではないかと考え始めます。

このままでは攻撃は頓挫(とんざ、失敗して大きな損害を受けてしまう)し、防御していた敵から攻撃を受ける可能性があると判断した幕僚やスタッフが作戦に関する見積もりを作成します。

この見積もりが指揮官に報告され、承認されると、攻撃を中止し、防御に移行するか、後退行動を選択することになります。

 

 

分水嶺を越えた瞬間に一気に片がつく

 

結果が明白になっていないのに幕僚やスタッフが見積もりを立て、早め早めに作戦を見直す必要があるのは、お互いに相手の行動を読みながら、戦闘の全期間となる1週間、1カ月先の状態を予測しながら、最初に立てた作戦を修正しながら戦いを継続して勝利に導こうとします。

特に重要なのは、多くの手を繰り出しながら戦いを進めてながら、分水嶺での戦いの凌ぎ合いでどちらかに勝ちが傾き始めると、素人ではどちらの勝ちかわからない状態のところで終局してしまう将棋と戦闘は似ているところがあります。

戦闘も分水嶺でどちらか有利な方向へ戦況が動いた瞬間、一挙に戦況が動いて勝敗が決してしまいます。その前に色々な手を打ちながら自分に有利な戦況のへ好転するように仕掛けや対策を行います。

このため、早め早めに将来の見積もりを立てて、作戦を修正します。ここで、悲観的に戦況を考え過ぎてしまうと相手ももうもたないと思い後退をしたりすると、両者で後退するような笑い話のようなことも発生してしまいます。

最初の戦況の判断は、とても難しく重要となります。
特に、致命傷は、楽観的に戦況を捉えて、自分に都合のいいように判断してしまうタイプは大変危険なタイプです。
悲観的になってしまうタイプは、戦闘に勝ちはありません。

 

 

 

 

 

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