上級陸曹として指揮官を如何に補佐すればいいか
-戦いに行くことになったら必ず選ぶ男の問いかけ-
年3回永田市郎(イチロー)さんが日本全国のやる気のある部隊に戦闘技術を教えに来日する時、永田市郎さんとの出会い以降、北九州の小倉にも来て頂けるようになりました。
イチローさんの戦闘技術は、見るもの全てに無駄がなく、実戦的であることを、私よりも隊員達が感じ取り、なんとかイチローさんの伝授する戦闘技術を自分のものにしようと時間を惜しんで訓練をします。
無限に変化する状況の中でも対応できる柔軟な考え方と動作は、固く分厚い鎧を付けた強さではなく、猫のように柔らかな動きと力みのない素早く反応できる身体の保持から生まれる強さです。固い強さを好む北九州の男達も、猫のように柔らかな動きと力みのない素早く反応できる強さを見た瞬間、すぐにのめり込んでいきました。
イチローさん訓練の初期のころから小倉に来て訓練のインストラクターをしていたSという男がいます。イチローさんが早い時期から戦闘技術を認めてるSは、高い戦闘スピリッツとCQB能力、各種装備に関する知識、激しい動きの中でも青白い炎でシンと落ち着いている心を維持できる男です。
もし戦闘に行くことがあれば、まずSを一番先にメンバーとして選ぶような信頼性が高く強い男です。
我が家で日本酒を楽しみながら、明日を語る会をしていると、上級陸曹の中でも重要な役割を担うようになったSが、真面目な話をしてすみません、質問があります。と突然切り出してきました。
「明日を語る会だから自由にいこうよ」と答えると、 「上級陸曹として指揮官を如何に補佐すればいいか」不器用な自分はどのようにするといいか聞きたいとのことでした。
会に参加している幹部のメンバーが指揮官の時に最先任上級曹長と協力して業務を進めた話を的確に伝えていました。
大学出身の優秀なメンバーと最先任上級曹長制度や教育システムが確立している米軍と、短い教育を受けて上番する陸上自衛隊の最先任上級曹長とは、ステイタス、メンタル面、知識と能力が異なります。
過大な任務や役割を与えても出来ないのが現実であり、多くの最先任が心を病んでいます。しかし、役割を小さく限定し隊員の服務情報だけを収集するだけでは、モチベーションも上がりません。
能力も指揮官と大きな差があります。
更に、指揮官は、色々なタイプがいるため、それぞれの補佐の仕方があます。
上級陸曹として指揮官の補佐は、いかなる状況にも対応しなければならない戦闘と同じであると捉えると、自分のやりたい事や指揮官と上手くいかないことにイライラせず、柔らかく立ち回れます。
素晴らしい人間性を持っている指揮官でも戦闘技術を十分に理解できないタイプであったり、上ばかり見ていて自己保身的タイプや申し分のない指揮官であったりするため、どのやり方がいいというものはありません。
まず、指揮官と話す機会を設けて指揮官の話を聞き、タイプを掴むことが大切です。指揮官の言うことを否定すると信頼感を得ることが難しくなります。意見具申をする時は、「更に良くするためには、」と話すと、角が立たず指揮官も自分を否定されていないように感じるので、話を聞いてくれます。そして、成果が出てくると信頼され、できることが広がります。
最先任上級曹長は、徹底した戦闘技術やガンハンドリングを隊員へ伝えることが重要な任務であると思います。実戦的な戦闘技術を身に付けることによって、強い精神も養われ、戦闘技術から学ぶ我慢強さや冷静さ、強くなるための規律の必要性を学ぶことができます。
強い部隊は、事故を起こしたり、怪我をしません。強い部隊と隊員を育成することが、任務を達成して生き残れる隊員が育ち、服務事故や訓練事故のない、規律のしっかりした部隊を作ることができます。
これこそ、最先任上級曹長が各部隊の最先任上級曹長とネットワークを使いスクラムを組んで進めることが求められる役割です。
Sは、多くの疑問をぶつけてきました。最先任上級曹長としての立場になると難しい事が多いのが現実だなと感じましたが、Sのようなタイプが最先任上級曹長になることは、部隊、隊員にとって素晴しいことであり、喜ばしい事です。
心の中で、しっかりなとSへエールを送りました。
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