中級陸曹は部隊の中核であり、部隊のエンジン

中級陸曹は部隊の中核であり、部隊のエンジン

 

 

2曹に育てられる

 
防衛大学校を卒業した私は、福岡県の幹部候補生学校で6カ月間幹部の基礎教育を受け、初の任地となる宇治市に所在する第45普通科連隊へ異動となりました。

当時(昭和の後半頃)第45普通科連隊の中隊には、幹部と上級陸曹が少なく、1小隊2小隊までは幹部が、3小隊は上級陸曹、4小隊は小隊長を2等陸曹がついている状況でした。

着任後、すぐに戦闘団検閲(2年に一回師団長が連隊のレベルを判定するために行う訓練)があり、候補生の私は、1小隊の2班長になり、5名の部下を初めて指揮することになりました。

小隊長の女房役であり小隊のまとめ役である「小隊陸曹」の2等陸曹が、部隊や隊員のことを全く知らない私を優しく時には、強い口調で指導してくれました。

時々、家に招いてくれ、部隊とはどういうところか、隊員の扱い方について奥様の手料理とうまい酒を飲みながら教えてくれます。

「今日朝礼後、候補生が2士に言った内容は伝わっていないよ」、「もっと隊員との間合いを近くして接しないとダメだよ」と日々早く一人前になるように育ててくれました。

人数の少ない上級陸曹の1曹は、階級が上でも小隊長としての体力と実力が無いと中隊本部に入れられ、実力のあるベテラン2曹が小隊長に任命される時代でもありました。
小隊陸曹もベテランの2曹が配置され、班長も若い2曹が配置されグイグイ部隊を引っ張っていく状況でした。

ヒヨコの私は、実力としては3曹なりたて程度のため、多くの2等陸曹やベテランの3曹に教えてもらったり、彼らの背中を追いかけて力を付けていく毎日でした。

この時から私の中級陸曹のイメージは、強く、激しく、柔らかく、中隊の中核であり、中隊を動かすエンジンとなるプロという地位と役割を持つ重要な隊員というイメージです。

 

 

中級陸曹に求められるもの

 

3曹から早く2曹に昇任する陸曹は、回りの隊員の心にやろうという火を付けることのできるタイプであり、中隊や連隊をけん引していく人材です。彼らの成長如何が部隊の強さに直結します。

彼らの強さが部隊の強さになります。

中堅で2曹になるタイプは、一つ一つ努力をしながら実力をつけてきたタイプで部隊の粘り強さと戦い抜く力となります。

後半で2曹になるタイプは、陰日向関係なくモチベーションを維持しながら、活動する部隊のロジスティックを支えます。

部隊のエンジンとなり、粘り強さを発揮し戦い抜く原動力であり、実戦に最も重要となる兵站を支えるメンバーが2等陸曹です。

そして、若い隊員を善導する役割があります。

 

 

部隊の強さは2曹の強さ

 

師団の3部勤務の時、部隊の強さを評価する重要なポイントは、小部隊の強さにあると考えていました。

最前線で戦闘、戦闘支援を実施する最小単位は、班・分隊である小部隊です。
小部隊が高いモチベーションと実力を保有し、自由自在に動く部隊は、実戦に強く、生き残り任務を達成することのできる部隊です。

この小部隊を班長や分隊長として指揮するのが中級陸曹です。
小部隊の強さイコール中級陸曹の高いモチベーションと実力であると考えました。
このため、中級陸曹の意識や行動が重要となります。

中級陸曹がチャレンジ精神を常に保持し、実力をつけようとする意思と日々の行動の積み上げを行い、若い隊員の心に火をつける人間性を磨きいている部隊は強い部隊であり、強い部隊になる部隊です。

 

 

上級陸曹にはできない中級陸曹の価値

 

中級陸曹は、年齢的に若く、体力的にも充実した時期であるため、背中で隊員を引っ張っていくことができます。年齢が高くなると、経験を積み話も上手くなりますが、最前線で戦い抜く馬力と衝撃力を発揮し維持することはできません。

体力的に充実し、必要な経験を積んできた中級陸曹の率いる部隊が、厳しい最前線で昼夜戦い抜くことができます。

中級陸曹には、極めて重要な役割があります。

私を育ててくれた中級陸曹、部隊の中核である中級陸曹に感謝するとともに、中級陸曹の活躍を常に応援をしています。

頑張って下さい。

 
 

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